青。
何で、この色なんだろう。
青い水晶。
それが、私の心の破片。
こんなに、透明なはずない。
こんなに、綺麗に見えるはずない。
私じゃない。
…、本当に、私じゃなければ良かったのに…。
「…震えているの?」
オレの声に、びくりと肩を震わせた。
「どうしたの、望美ちゃん」
「何でも、ないです。ほんとですよ」
何でもなさそうに、そうは見えないように無理をして笑った。
こんなとき、オレはどうしてあげたらいいんだろうね。
気付かない振りをしてあげたらいいのかな。
それとも、直ぐにでも抱き寄せて、大丈夫だって言ってあげたほうがいいのかな。
「そっか」
どっちも出来ずに、オレは情けなく笑う。
「…ごめんなさい」
「な、何が?」
「心配、しますよね。こんな風に、一人悩んでたら」
困ったような顔。
「無理しなくて良いよ、誰にだって、悩み事の一つや二つは絶対にあるんだから、一人で考えたくなったってそれは当たり前だよ」
そう、誰だって心のうちに、悩む種を持っている。それは今現在のオレにだって言えるんだから。
「ははっ、景時さんは優しいですね。これが将臣くんや九郎さんだったら絶対追究してきそう」
優しい、か。意気地がないだけ、とか、君を支えられるほどの器がないだけ、なのかも知れないけれど。そう、彼女の言った二人のように。
彼女は、サラリ、と髪をかき上げる。それがまるで、舞を舞うような所作で。そういえば彼女は神にさえその舞で願いを叶えさせた女性なのだと実感する。その美しさたるや。
まぁ、彼女の願いならば、あの神はいくらでも叶えるだろうし、神でなかったとしても…。
「さっき、震えているように、見えました?」
「え…」
「私、怖がりなんです」
そういって、彼女は自分の両の手の平を見つめる。
「でも、もう、大丈夫ですよ」
ホラ、震えていない、と、オレに向けて差し出す。
「うん」
意外な言葉、怖がりだと。
いつも彼女は気丈に笑っていたから、気付けずにいたんだ。
「大丈夫だよ、望美ちゃん。怖いことなんてさ、このオレにど〜んと任せてくれちゃっていいんだからさ」
そうだ、望美ちゃんが傷付くことはない。もう、怖がる想いなど、させないで済むように。オレが、君を守る。
「景時さん…?」
「オレが、守るよ。君を、守る。何からも、絶対、命をかけて、君を、守るから」
命に代えても、オレが君を守る。
あの、青い水晶は君の綺麗な心。
その中に巣食う者が、どれ程のものかも、オレはわかっている。
この身で受けたことのある力だ。
それでも、あの綺麗な石は、君そのもの。
あの青さ、温かさに、オレは惹かれるんだ。
そして、それは君を守る力になると信じている。
だから、オレは、君を守るよ。
君の心を、取り戻す。