「綺麗ですね…」
隣で空を見る大好きな人をこっそり、盗み見ながら、言葉にする。
「ああ」
「やっと、先輩と一緒に見ることが出来ました」
去年も招待してもらった孤島の別荘。
星降る夜を見ることの出来た二人は恋人になれる。そんな伝説もある、素敵な島。
二人きり、岬に造られた四阿から見る夜空は、降り注ぐように星が流れている。
「そうだね」
先輩が、優しく笑ってくれる、それが、とても嬉しい。
「あの時は、本当にすみませんでした」
「いや、夢野くんはあの時、僕にものすごく謝っていたじゃないか。構わないよ」
「でも…」
クロミの悪夢魔法のせいとはいえ、先輩との折角の約束を…。
「そんな顔しないで」
「柊先輩…」
誘ってもらえて、すごく、すごく、嬉しかったのに。
「僕は、夢野くんと一緒に見ていられる今が幸せだから、それで構わないって言ってるんだよ」
「…私も、今、すごく、幸せです」
この島の星を、一緒に見ることの出来た二人は幸せになる、本当のことなんだ。
「あの日、先輩の所に行けなかったのが、今でも少し、悔しい」
あの日、小暮と一緒に見た星空。
「でも、私、あの星空を見て思ったんです。先輩も、きっと同じ空を見てるんだろうなって」
降る星に、願いも込めて。
「夢野くん…」
あの場所には行けなかったけれど、想いは、想いだけは、先輩の傍に。
「星の降る空を、先輩も見てるんだって思ったら、先輩と一緒に見てる気になって嬉しかったです。私、単純ですね…」
同じものを、見ているのなら、気持ちさえも、共有出来るんじゃないか、なんて。
「…見ていたよ、君の見ていた星空を。けど、今ならわかる、あの時、心は、虚ろだった」
「…っ、先輩」
「君の来ないことが、不思議で。ぽっかりと穴が開いたようで。星空は美しかったけれど、綺麗だと思えないほど」
私、…そんなに先輩のことを傷付けてしまったんだ…、なんてことをしたんだろう、私…。
「でも、」
「えっ、きゃ」
「今は、僕の腕の中に夢野くんがいる」
「先輩……」
先輩の腕の中、とっても温かい…。すごく、落ち着く…。
「あの星空の向こうに、君がいたんだね」
「…はい」
「一緒に、星空を見ていられたんだ」
離れていても、私は一緒に。
「はい」
「では、僕たちは永遠に一緒にいられるね」
「もちろんです、先輩…」
ずっと、ずっと一緒です。
今見ている、この星達が叶えてくれます。
だから、ずっと…。